ロシア革命の再審と社会主義 村岡到 編
下斗米伸夫 岡田進 森岡真史 佐藤和之 村岡到
これまでのロシア革命論を超える視点
──宗教・農民・生産物分配──から解明。
マルクス主義を超える展望を提起!
2017年7月7日刊行
四六判 186頁 1800円+税
ISBN978-4-904350-43-0 C0031 |
目 次
まえがき
ロシア革命と宗教──古儀式派の存在 下斗米伸夫
はじめに
1 古儀式派とは何か
2 労働組合と革命
3 古儀式派系の人脈の強さ
十月革命一〇〇年とロシア農民の運命 岡田進
はじめに
1 農民革命への道
2 農民革命期におけるソビエト権力と農民
3 「ソ連社会主義」のもとでの農業と農民
4 エリツィン農業改革とその帰結
おわりに
販売競争から獲得をめぐる闘争へ
──社会主義経済における意図せざる解放と束縛 森岡真史
序 論
1 社会主義経済の予見的批判
2 不足経済の歴史的形成過程
3 獲得をめぐる闘争の特質と帰結
結 論
ソ連邦崩壊後の労働組合運動
──モルドバのサンディカリズム 佐藤和之
はじめに
1 労働者がおかれた状況
2 労働問題と労働組合の対応
3 ナショナルセンターの統合問題
おわりに
社会主義実現の困難性 村岡到
はじめに
1 〈社会主義志向国〉の明確化
2 左翼の空論と立ち遅れ、その克服
3 〈過渡的政権〉の構想論議を
付節 〈土着社会主義〉の大切さ
『ソ連邦の崩壊と社会主義』への書評とリプライ
「ロシア革命一〇〇年」に貴重な一石 佐藤和之
〈則法革命〉〈複合史観〉、今度は〈資本主義克服社会〉 西川伸一
社会主義の理念の再創造 斉藤日出治
ソ連邦の崩壊を論理的にたどる 児島宏子
行動的思想家による独創的な考察 岡田進
マルクス主義の責任の明確化 森岡真史
簡単なリプライ 村岡到
ロシア革命論・ソ連邦史に新地平
──下斗米伸夫『ソビエト連邦史 1917~1991』 村岡到
あとがき
詳しい目次 |
まえがき
六月一五日、政府与党は「安倍一強」を背景に参議院法務委員会の採決を省略する「禁じ手」を使って、共謀罪法案を本会議で強行採決して成立させた。共謀罪法の成立によって、日本の民主政はまた一つ大きく変質する。歪曲民主政はいっそう酷く劣化する。民主政の実現を願う勢力は、一昨年の戦争法に続いてまた敗北した。この冷厳な事実をまず直視しなくてはならない。
目を外に向ければ、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核武装やミサイルの開発が進み、軍事的緊張を高めている。アメリカで昨年一一月の大統領選挙で当選したツイッター大統領と呼ぶべきトランプ大統領は、「アメリカ・ファースト」をやたらに呼号し、移民排斥を強化し、六月一日には地球温暖化抑制の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を表明した。イギリスはEUから離脱し、ISのテロがヨーロッパ諸国を不安に陥れている。
歴史を振り返ると、今年はロシア革命一〇〇年である。だが、これを記念した企画、著作、論文はなおごく少ない。著作では、下斗米伸夫氏の『ソビエト連邦史』と池田嘉郎氏の『ロシア革命』くらいである。日本共産党は何も発表していないし、新左翼党派もほぼ無関心である。
昨秋、私は『ソ連邦の崩壊と社会主義』を刊行し、私が編集長を務める『フラタニティ』第四号(一一月)で「ロシア革命100年を前に」を特集した。この特集には下斗米氏、岡田進氏、森岡真史氏に論文を寄せていただいた。幸いにも拙著には六人の方が書評を書いてくれた。特集の三氏にさらに補充・改稿していただき、佐藤和之氏にも労働運動をテーマに寄稿していただいた。さらに六人の書評も合わせて、本書を編集することにした。編者の私は、書評への簡単なリプライと、ソ連邦論とは離れて、日本における社会主義のための運動について、その限界や当面の課題をテーマとした小論と、下斗米氏が三月に著した『ソビエト連邦史』の書評も収録した。
前記のような内外の殺伐たる国際情勢のなかで、ソ連邦論や社会主義志向がどのような意味をもつのか。ユートピアが過ぎるのではないか、という反発も起きるだろうし、三思四考しなくてはならないが、それでも私はこれらの理論的探究は、この混迷の時代を突破するために理論的な役割を果たすことが出来ると深く確信している。ナチスが政権を握った一九三三年にロンドンに亡命した、ハンガリーの社会学者カール・マンハイムは、二九年に刊行した『イデオロギーとユートピア』(未来社)をこう結んだ。「ユートピアのさまざまな形態を放棄するにつれて、歴史を創ろうとする意志を失い、それとともに歴史を洞察する力をなくしてしまう」(二八二頁)と。
この混迷の時代に平和の創造にむけて停滞を打破し、一石を投じるものになることを切望する。
二〇一七年七月一日 村岡 到 |
ロシア革命の再審と社会主義 目 次
まえがき
ロシア革命と宗教──古儀式派の存在 下斗米伸夫
はじめに
1 古儀式派とは何か
2 労働組合と革命
3 古儀式派系の人脈の強さ
十月革命一〇〇年とロシア農民の運命 岡田進
はじめに
1 農民革命への道
2 農民革命期におけるソビエト権力と農民
3 「ソ連社会主義」のもとでの農業と農民
4 エリツィン農業改革とその帰結
おわりに
販売競争から獲得をめぐる闘争へ
──社会主義経済における意図せざる解放と束縛 森岡真史
序 論
1 社会主義経済の予見的批判
2 不足経済の歴史的形成過程
A 国民経済の崩壊を伴う絶対的不足
B 国民経済の成長を伴う相対的不足
3 獲得をめぐる闘争の特質と帰結
A 供給者─需要者(売手─買手)関係の反転
B 貨幣の失権と労働の解放
C 生産物の獲得費用の増大、品質の劣化、種類の減少と固定
D 資本主義および社会主義における欲求と生産
結 論
ソ連邦崩壊後の労働組合運動──モルドバのサンディカリズム 佐藤和之
はじめに
1 労働者がおかれた状況
2 労働問題と労働組合の対応
A 最低賃金とヤミ賃金
B 失業と労働力の国外流出
3 ナショナルセンターの統合問題
おわりに
社会主義実現の困難性 村岡到
はじめに
1 〈社会主義志向国〉の明確化
2 左翼の空論と立ち遅れ、その克服
A 戦後日本政治の基本的課題
B 自衛隊問題での共産党のもたつき
C 象徴天皇制に沈黙する共産党
D 経済政策でのいくつかの試み
3 〈過渡的政権〉の構想論議を
付節 〈土着社会主義〉の大切さ
『ソ連邦の崩壊と社会主義』への書評とリプライ
「ロシア革命一〇〇年」に貴重な一石 佐藤和之
〈則法革命〉〈複合史観〉、今度は〈資本主義克服社会〉 西川伸一
社会主義の理念の再創造 斉藤日出治
ソ連邦の崩壊を論理的にたどる 児島宏子
行動的思想家による独創的な考察 岡田進
マルクス主義の責任の明確化 森岡真史
簡単なリプライ 村岡到
ロシア革命論・ソ連邦史に新地平
──下斗米伸夫『ソビエト連邦史 1917~1991』 村岡到
あとがき |