ベーシックインカムの可能性──今こそ被災者生存権所得を! 村岡 到
危機に直面する社会を再生に向けきり開く1冊!
2011年4月20日刊行 46判 138頁 1400円+税 ISBN978-4-904350-17-1 C0030 |
〈被災者生存権所得〉の新設を 東日本原発震災に直面して 村岡 到 第1部 ベーシックインカムとは何か 第2部 『ベーシックインカムで大転換』への批評 第3部 〈生存権所得〉論の深化にむけて |
まえがき ますます多くの人が実感しているように、貧困と格差が拡大し、閉塞感が一段と深まっている。〈無縁社会〉や〈ジャパン・シンドローム〉が深刻となっている。政権は初めて民主党へと交代したが、対米関係にせよ、社会保障問題にせよ、農業問題にせよ抜本的打開の道は不明である。政治が劣化し、確かな価値観が揺らぎ、〈正義〉とは何かが広く問われている。この問いには法学者の尾高朝雄がアリストテレスの「エウダイモニア」を引いて「万人平等の福祉」だと答えていた(『国民主権と天皇制』青林書院、1954年、68頁)。そうした状況下で、「ベーシックインカム論議」が近年にわかに振るっている。私は、「ベーシックインカム」=〈生存権所得〉は、〈無縁社会〉を脱出する経済的基礎を創り出す、と考える。憲法第25条の生存権を活かす道でもある。 3月11日、東日本原発震災が起きた。マグニチュード9・0という未曾有の大地震と大津波である。世界最大級の規模である。炉心溶融に近い重大な原発事故も重なり、日を追って事態は深刻となっている。どうやって復興するのか、英知と力を結集しなくてはならないが、この小著のテーマと関連させて言えば、〈被災生存権所得〉の新設・実施が必要である。急遽、「〈被災生存権所得〉の新設を」を書き加え、巻頭に配した。大震災については、直後に発表した「地球からの警鐘──〈脱原発〉への転換を」(『プランB』第32号=4月)を参照してほしい。近く、この論文も収録して村岡到編『脱原発の思想と活動』を緊急出版する予定である。 |